第一回【Gの密】

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ここは体が重いと絶え絶えに言う彼女を、 体が軽くて浮き上がりそうな僕の上にのせた 服を脱いで真空を作る遊びに夢中になった。 汗も蜜も、彼女の層ではこんな伝い方はしないのかもしれない あんまり脆弱で壊れそうだから、飽きたといって彼女の階層に送っていった 体の何もかもが違うのだろう 皆一様に細く、色白で華奢だった 取り囲まれ、罵られ 鉱石と硬貨の入った袋を投げつけられて、頭が割れるほど痛かった 転位装置もあったが、断った ふらつく足で来た階段を降りる 体が軽くて踏み外しそうだった 靴に鉱石と硬貨を入れた 足を運ぶ度に、痛みと重さが生まれて消えて、心も刺す 三十七階層。 ここで、出会って触れた 知ってしまった 降りていく 足がどんどん重くなる 行きは軽かったはずだ 自分の場所に戻るだけ ああ、知ってしまえば辛い 彼女もさぞかし体が重かったんだろう はじめての重さと熱に泣いてくれた 十四階層。 ここの扉を開ければ、元通り 皮の靴に血が染みている ちょうど良い、この金で靴を新調しようか 彼女といたのは十八時間と少し 僕はここで、屋台の揚げ物や汁そばで酒を飲む大人になるだろう 甘い記憶は、時折取り出して 舐めるくらいがちょうど良い
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