1章 ありふれたこと

3/20
前へ
/20ページ
次へ
「俺、お昼買ってくるけど?」 オフィスに、昼休みを告げるチャイムが鳴り、 隣の席の、大橋光希が話しかけていた。 彼は、私の顔を見つめて辛抱強く、 返事を待ってくれてる。 光希の、低くやわらかい声と、 忍耐強く、見守ような彼の視線で、 私は、ゆっくりと現実に引き戻される。 ずいぶん前の事を、思い出していた。 父さんが、まだ生きてた時のこと。 ごめん光希、もしかして返事待ってた? 私の返事なんか待たずに、 さっさと、コンビニいってくれればいいのに。 私は、パソコンのモニタから顔を上げ、 「待たせてごめん。考えごとしてた」 と謝った。 彼は、いいよそんなのと笑って答え、 「何か、要るものある?」と聞いてきた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加