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どうやら天童家では本家と分家には、画然(かくぜん)とした身分差があるようだ。当然、身分格差は憎しみと争いを生む。2700年以上も続く怨恨(えんこん)を想像すると背筋が寒くなった。ジャクヤが唇の端をつりあげた。微笑のつもりなのだろう。
「そんなだいそれたことは考えたこともありませんよ。天童分家は本家に尽くすのが責務ですから」
「おいおい、本家とか分家とかおれたちには関係ないから、さっさと近衛(このえ)四家の第一席、天童家の力を教えてくれよ」
こんなときでも緊張せずに、普段通りに突っこめるのはさすがクニだった。ナンパだが案外度胸はある。タツオはクニの図太い神経を高く買っていた。
「そうやね、戦場ではさまざまな偶然が発生する。同じように風が吹いても、それがどちらにいい効果を生むかはわからない。どれほど戦略を練っても、最終的な勝敗は運に左右されることが多いんだ」
クニが首をかしげた。
「その運を天童の一族なら左右できるっていうのか」
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