7(承前)

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「確率的に揺らぎがある出来事を、その目で導き結果を左右することができるのか」 「はは、そういうことや。あそこにいる萬(よろず)家のマッドサイエンティストたちは、天童家に伝わる魔眼を敵に災いをもたらし、味方に幸運をもたらす力だと定義づけているみたいや。どっちも確率論的かつ量子論的な力というとる。訳がわからんね。もう武器開発といってもテクノロジー的には限界にきとるさかい」  運や確率を戦争技術に導入する。確かに軍事テクノロジーはもう臨界点に達していた。たとえば通常の爆薬は化学的な構造式により、もっとも威力のある化合物が100年近く昔に発見されている。7世紀の唐代から始まった爆薬の歴史は、オキタニトロキュバンで極まったのだ。1200倍の体積膨張と秒速10100メートルというファンタスティックな爆速は、進駐官養成高校の化学の試験によく出題されていた。この爆薬は生成に手間とコストがかかりすぎ、純金よりも高価になるため一般には使用されていなかった。  ジョージが深刻げにひとりごとをいう。 「戦場での運を左右する魔眼か……」
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