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「そないに重たく考えることないんよ。天童がおったら、敵にすこし運が悪くなり、味方に運がよくなる。その程度のものや。そうやろ、ジャクヤ」
天童分家の少年少尉が首を振りながらいった。
「結果としてはそういうことになります」
しかし本家のワタルとは違って、ジャクヤには天童家100年にひとりの才能があるという。タツオはそこが気にかかった。ワタルには逆立ちしてもできないなにかを、ジャクヤは可能にするはずだ。そうでなければ、「須佐乃男(すさのお)」最終候補に分家筋から残されるはずがない。
「実際にはジャクヤさんは、どんなことをするんですか」
銀の目をした新任少尉はタツオを見てから、視線をクニに移した。
「きみは鳥居(とりい)くんといったね。右に四十センチほど動いてくれないか」
なんだよといいながら、クニは右に半歩移動し、テーブルに近づいた。
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