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そんな彼女の姿を見つめ、俺の心はぎゅっと締め付けられ、甘酸っぱくなる。
〝やはり。将来は咲夜と結婚するのかなぁ。〟
など、浮かれ気分で妄想し、口元がだらしない俺。
そんな俺に気づく事無く、彼女が俺の腕を引っ張る。
「先輩!先輩っ!」
「う!うん!?どうした?」
「ここ、どこでしょう。」
「ここどこでしょうって、あはは……
はぁーっ!?」
彼女に見とれていた俺は、我に帰り、辺りを見回す。
見渡す限りの森林に方向感覚を失い、まるで、迷宮にでも迷い込んだ感覚に陥る。
「先輩………。」
と、不安そうな彼女に、俺は恐怖を飲み込む為、拳をぎゅっと握る。
「だ……大丈夫だよ。
俺から離れちゃ駄目だよ?」
「うん。」
彼女の手をギュッと握り、全神経を耳に集中するつもりで、辺りの音に聴き入った。
「んー。あっちの方から川の音がする。
行ってみよう。」
「はい!」
俺と彼女は、川の音がする方へ向かっていった。
「川だ。これを遡れば、多分ロッジに着くよ。」
「はい!」
〝ん?おかしいな。
俺ですら、恐怖なのに、咲夜は怖がっている様子は無い。〟
どちらかと言えば、この状況を楽しんでいる様に見える。
「先輩!
川の流れが綺麗ですよ!」
「?
咲夜。怖く無いの?
俺ら遭難してるんだよね?」
「えっ?
怖いですよっ!
あー。怖いっ。
先輩っ!ギュッてして下さい。」
怖がり方が明らかに怪しい。
だが、話が進まないと思った俺は、とりあえず、ギュッと抱きしめる。
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