彼犬と僕の1ページ

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「もしかして…昨日から迷ってますか?」 俺が恐る恐る聞くと佐藤は、鋭い眼光で数秒俺を睨んだ後、ニッと笑いだす。 〝やっぱりぃー!!?〟 俺は、愕然とした。 地元の人でも迷うほど、奥深くまで来てしまった様だ。 〝どうしよう!? まぢで帰れないじゃん。〟 彼女もそれを察してか、気を失いそうになっている。 〝どうするか………。〟 もはや、佐藤に構っている暇はなさそうだ。 〝やはり、動かなければ解決しない。〟 決心した俺は、彼女の手を引き立ち上がる。 「佐藤さん。 オレ達、帰り道を探してみます。」 と、佐藤を置いていこうとした瞬間、佐藤に腕をギュッと掴まれた。 「うっ!?」 「中山……」 「はい。」 「中山も俺を置いていくのか?」 「うっ!?」 牛に、置いていかれ、俺達にも置いていかれそうになり、必死なのか、俺の腕を離そうとしない。 「藤次……」 「ひゃい!?」 「お前も同じ気持ちか。」 「いえ……そのー。」 「い……一緒に行きますか?」 口を濁した彼女の代わりに、俺が言うと、佐藤は、沈黙の後、立ち上がり、 「………。うん。」 と一つ返事で答えた。 「あはっ……あはは……。」 苦笑する俺に対し、佐藤は何処となく嬉しそうだった。
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