囚われた魂

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***  功は沙里に木の橋へと強引に引っ張られていく。なんて力なんだ。身体の自由が利かない。冷凍庫にでも入れられているようだ。凍えて死んでしまう。というかもう半分死の国へ足を踏み入れているのだろうけど。 「ふふふ、もう少しよ。そうすれば楽になれるわ」  橋に足がかかるそのとき、またしても突風がぶつかってきた。橋へ足が踏み入れることなく押し戻された。握られていた沙里の手が離れて、功は右側へ沙里は左側へと飛ばされる。 「功、お願い……死なないで。目を覚まして。待っているから、目を覚まして」  転がり倒れ起き上がろうとしていたとき、功の耳にはっきりと声が響いた。凍り付いた身体が温かな想いに触れて解けていく。胸のあたりに何か押し当てられているような感覚がしてきた。なんだこの感覚は。苦しい。息が、息が……。 「くそっ、またしても邪魔するのかあの女は。私は功とあの世で添い遂げるのだ。負けてなるものか」  功は脂汗を額から浮き上がらせつつ声の主を見遣る。沙里の顔は鬼の如く変化しようとしていた。額には角も生え始めている。口からも牙が伸びていた。目が朱色に染まる。  風が強さを増して沙里の身体を押しやっていく。だが、沙里はその風に耐えてこっちへとじりじりと進んで来る。  逃げなくては。そう思うのだが、どうにも動きがとれない。呼吸とはどうやってするんだったろうかとわからなくなる。息苦しい。胸が痛い。死にそうだ。三途の川の近くにいるせいなのだろうか。
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