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「みーつけた」
おまえはいったい何者だ。
「むふふ、私のもの。ひとりにはしないって安心しな」
何を言っている。冗談はよせ。何も聞こえない、聞こえるはずがない。雲が話すだなんて冗談じゃない。
ここに居てはいけない。早く、逃げなくては。心の内で警鐘が鳴り響いている。
功は砂浜を走る。砂に足を取られそうになりながらも、走り続ける。
急げ、早く。ここから逃げろ。雲が人の顔になって話すだなんて。そんな馬鹿なことがあっていいはずがない。いつの間に異世界に迷い込んでしまったんだ。いくらファンタジーが好きだからってこんなことありえない。
走りながらも、いろんな考えが頭の中を駆け巡る。
そういえば、なぜ海にいるんだろう。砂浜にいるんだろう。ここへはどうやって来たんだろうか。何もかもがおかしい。
――俺は……いったい誰だ。
わからない、わからない、わからない。
名前もこの場所もあの雲の化け物も、すべてがわからない。理解不能だ。
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