囚われた魂

7/17

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 身体中に毒が広がっていく。死ぬ。このままでは間違いなく死ぬ。ああ、終わりだ。力が抜けていく。その瞬間、誰かの声が耳元で囁かれた。 「待っているからね。ずっと待っているからね」 「えっ?」  優し気で心に沁み渡るような女性の声だった。この声は知っている。けど、誰の声だったろうか。不思議とその声を耳にした瞬間から痺れていた身体が元に戻っていった。痛みもない。身体が軽くなった気さえする。見回して見たところ巨大蜂の姿も窺えない。空を見上げても怪しい顔の雲も見当たらない。  よくわからないが、危機を脱したのだろう。大きく息を吐き出して身体をゆっくりと持ち上げる。  上体を起したとき、景色に変化があることに気づいた。永遠と続く砂浜の先に、灯台が目に映る。ただそこへ辿り着くには、長い階段を登らなくてはいけないようだ。それでも、行くしかない。あそこに何かがあるはずだ。この世界を脱する扉があるかもしれない。一縷の望みに賭けるしかない。  こんな訳のわからない場所に長居は無用だ。 ***
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加