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「凄絶な暗さ…この暗さも、悪くはない」
真っ暗な森を進む、一人の女性。彼女の名前は菜々姫。
彼女はとある場所を目指していた。
小鳥の囀りすら聞こえない、薄気味悪い森。
そう思ったのも束の間、何処からともなく綺麗なハープの音色が聞こえてきた。
「この音色…いつ聞いても、魂が落ち着く」
そう呟いた菜々姫の口元には、うっすらと笑みが浮かべられていた。
暫く鳴り止む様子の無いその音色は、まるで森に足を踏み入れた彼女を歓迎しているかのように聞こえていた。
「鏡子」
視界が開けたその瞬間、彼女はその名前を口にした。
その時、初めてハープの音が鳴り止んだ。
「菜々さん」
その言葉に答えるように発せられた声。
歓迎しているかのよう、ではなく、実際歓迎していたのだ。
何故なら、その言葉を発した人物はとても嬉しそうに笑っていたのだから…
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