第1章

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 前方の信号が赤になり、ブレーキを踏んだ父が「いやあ、残念だ」とため息を付く。 「何が残念なの?」  窓の景色を眺めながら、私はたずねた。 「もしお前が死んだら、レンを養子に迎えようと思ってたのになぁ。やっと息子ができると喜んでたのに、残念だった」 「……」  信号が変わり、車が走り出す。  ブブブ、ブブブ。  夫のスマホが振動する。画面を確認した夫は、何事もなかったかのようにスマホをポケットに戻した。 「誰から?」 「ああ、ユウ。後でかけ直す」 「……」  助手席で眠る母は、見覚えのあるアイシャドウを塗っている。 「グミ、おもちゃ」  寝ながら笑う息子。  ふう。深呼吸をした私は、再び決心する。 (100歳まで生きてやるぞ)と。                          完
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