第1章

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「は?」  私の耳はおかしくなってしまったのだろうか。  和也が口元に笑みを浮かべた。 「新居は渋谷区で探そう。あそこなら同性婚の証明書を発行してくれる」 『そう言うと思って、幾つか物件をピックアップしてみた。メールで送るから見といて。じゃあ、また』  電話が切れると同時に、お風呂場から母とレンが戻ってくる。 「電話、終わった?」  ニヤニヤ顔の母が尋ねると、「はい」と意味深な目配せを夫が返す。その周りをニコニコのレンが走り回る。 「レンが欲しいのは~、ママがダメって言って買ってくれなかったミキサー車と、ショベルカーとトラックと~」 『家族皆が幸せなら娘も安心して成仏できる。めでたしめでたし』  父の言葉が蘇る。  確かに皆、幸せそうだ。  いいことなのかもしれないけど。  みんなの幸せを願っていたけど。 「こんなハッピーエンド、認めない!」  私は叫んだ。  結局、皆私をあっさり忘れて自分勝手に生きてるだけじゃん!  ぜんっぜん、めでたくない!!! (見てろよ~)    絶対生き延びてやる!!!!!  私は、強く強く決心した。  その途端、まばゆい光が私を包み込んだ。
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