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庭の隅に置いてあるゴミ箱を、よくひっくり返す猫がいた。
ある日、ゴミ箱の近くに小さな落とし穴を作ってみた。
少しずつスコップで掘り進めた穴は、直径にしておそらく30㎝程度。深さも30㎝あるかないかぐらい。その穴の上に新聞紙を乗せて、薄く土をかぶせる。
そこだけ色が変わっているとすぐにばれるので、周りにも掘り返した土をばらまく。
翌日、新聞紙は穴に落ちていた。穴を覗くと動物の足跡があった。恐らく猫が落ちたのだろう。30㎝の深さだ。何の気なしに脱出したに違いない。
私は家に入り、部屋の真ん中で寝そべった。そしてそっと目を閉じる。暗闇が広がった。
そこで私は家の和室を思い浮かべる。唯一テレビがある部屋だ。
畳の下には床板がある。その下には少し空間があり、更にその下は地面があるだろう。
その地面を昨日のように少しずつ掘ってみるのだ。
昨日は直径30㎝。今回はもう少し広くしたい。深さは30㎝じゃあ浅すぎる。こちらももう少し深くしたい。
私は毎日毎日少しずつ掘り進める。1mぐらい堀ったところで、ダイニングの椅子を踏み台に中に入ってみる。しゃがんで両手を広げ、広さを確認する。 豆だらけの手には空気しか触れていない。
そうしてまた掘り進める。息は荒くなり、手は赤や茶色に染まっていく。
2mの穴ができた。今度は梯子を用意し、中に入ってみる。手を上に伸ばしてみるが、土壁は続いていた。しかし、それは私の身長だからだろう。飛んだり跳ねたりを考えると、やはり保険もかねて3mは確保したい。
そうして私はまた掘り進める。数日後、やっと3mの穴が完成した。穴はこれで完成だ。今度は畳と床板に細工をしなければならない。
床板は取っておけばいい。畳は一層、くり抜いておくのはどうだろう。上に座布団を置いておけば、気づかれないのではないだろうか。
後はあの人の後ろから、どうなるかを見守ればいいだけだ。
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