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その人は飯塚さんの元カノ。でもそのときはまだ彼女。で、その人は歩く足を急に止め、飯塚さんに別れ話を切り出してきた。
「お恥ずかしいことですが、私はこんなに好きなのにどうしてあなたは私を好きになってくれないの? とか、もうあなたのそれにはついて行けないのとか、大体そのどちらかの切り出しで別れ話をされることは、俺にはよくある話で」
と、飯塚さんは淡々と語った。
ちなみに、飯塚さんがそんなことを話したのは、私に訊かれたからじゃない。おじいちゃんも訊いてない。飯塚さんが自発的に、メガネを失くした事情ですがと、メガネを捨てて貰えないかと言ったあと話し始めのだ。で、いまの言葉はその途中のひとつ。その言葉の中にどうしても気になることがあって、それまでは黙って話を聞いていたのだけれど、私はつい口を挟んでしまった。
「それって何ですか?」
するとおじいちゃんを見ていた飯塚さんは私を見てきて、「それ?」と。
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