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カランカランと音が鳴る。
それは、店のドアが開かれたことを示す音。そのときテーブル席にコーヒーを出していた私は、音に釣られてドアの方を見た。
商店街の通りから1本外れているという立地、メニューの何を頼んでも必ずコーヒーが出てくるという特殊性(?)から、ランコントゥルに来るお客さまは大体が常連さんで、けれど私の視界に入ってきたのは、初めて見る男の人だった。
歳は20歳くらい。着ているものはあきらかに私服で、普通日だったらともかく、日曜日の今日という日に私服を着ていることは、普段は何をしている人なのか、その推測の助けにはならない。でも何となく、大学生かな? それとも専門生かな? と、雰囲気的にそのどちらかの気がした。
それから、顔はイイ。甘い系じゃなく、どちらかと言えばクール系の、こりゃ絶対モテるぞっていう、私には、ありがたやと拝む以外の縁はなさそうな顔――と、少し遠目ながらひと通りその人のことをチェックし終えると、ドアの前から動かず、視線を彷徨(サマヨ)わせているその人に近づいた。
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