11人が本棚に入れています
本棚に追加
「メガネが無くて不便だったんじゃないですか? 拾ったこの娘によると、メガネを落とされた期間は1日や2日じゃなかったようですし。それにそのあとも、この1週間は交番なわけですから」
私同様、いやそれ以上に、自分のこだわりを褒められて嬉しかったらしいおじいちゃんはニコニコ顔で、飯塚さんにそう尋ねた。すると飯塚さんは、「ええ、まあ」と何だか曖昧なお返事。それで思わず訊いてしまった。
「あのメガネってもしかして伊達だったんですか?」
「え? あ、いや、ちゃんと度入りのメガネだよ」
「そうなんですか。……あ、じゃあ、スペアメガネがあったとか?」
「スペアもあるには1つあるけど、あのときはちょうど丁番が壊れてて。……丁番ってわかるかな? レンズ部分と蔓を繋ぐものなんだけど、そこが壊れるとメガネがかけられなくて――」
「つまり、メガネの1つは失くして、スペアのメガネは使えなくて、なのにそんなに不便を感じなかった。ということは、コンタクトレンズがあったから大丈夫だったってオチ、いえ、そういうわけだったからですか?」
最初のコメントを投稿しよう!