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カップ麺を手に取った。
君が「プラネタリウムを見に行きたい」と言うもんだから、車を走らせて遠くの街に行こうとしたらその日は大雪で、高速道路で立ち往生してしまった日の物だ。
結局プラネタリウムの営業時間は過ぎてしまい、やっとの思いで抜け出した赤いテールランプの群れから最寄のコンビニでカップ麺を買って食べた。
光る箱だけがバックライトとして寂しく照らすコンビニの駐車場。
薄暗い車内で、カーラジオから入ってくる気象状況に耳を傾けながら、汁を飲み干したカップ麺の容器の底に、僕は箸を何度も突き立てた。ズ、ズと不気味な音を立てては抜いて、怪訝な目をする彼女を横目に、まぁ見てろと穴の開いた底面を上に向けた。
もしかして、人殺しの才能でもあるのかしら。わりと本当に心配そうな声だった。うるさい。
そしてスマートフォンを取り出すと、懐中電灯のアプリで下に向けられた開け口から光を照らした。
「あ、プラネタリウムだ」
車内の天井に広がった光の粒はカップを回せばその位置を動かし、季節の移ろいすらも再現してみせた。
でもまぁ、本物ではないから、カップラネタリウムかな、ちょっと控えめに笑った僕の言葉だけを鮮明に覚えている。
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