30人が本棚に入れています
本棚に追加
兵達は私を、城の最上階にある見晴らしのいい大広間に入れた。
裸に近い格好の少年達に囲まれ、体に何かを塗らせている脂ぎった男がいる。
「さあ、銀の鳥よ…歌い、舞え。一生我の為だけに尽くすのだ」
男は少年の一人が持つ盆より盃を取り、下卑た目で私を上から下へと眺め喉を鳴らし酒を飲む。
私は黙って片膝をつき頭を下げた。
「何をしている。さっさと始めぬかっ!」
王と言うには品のないこの男はかなり短気らしく、持っていた盃を私に投げつけた。
「宿り木のない私には舞えませぬ」
「ならば歌え!」
王は怒りに顔を真っ赤にし、慌てた家臣が強引に歌わせようと鞭打った。
「宿り木のない私には歌えませぬ」
「貴様、我に逆らうか!」
沢山の剣先が一斉に私に向けられる。
「私は鳥……宿り木さえあれば生きられたのに…」
短気な王の手が大きく振られ、怯えたように少年達は顔を背けた。
私は上へ飛び上がり、金属がぶつかり合う音が響いた。
そのまま兵達のいない場所へ着地し、駆け出す。
「おのれぇ!逃がすな!」
王が叫んだその時、私は外へと高く羽ばたいた……
◇
次の日―――
深い傷を負い意識のない男が寝かされた部屋の前の木に、小さな銀の鳥がとまった……
男はうっすら笑みを浮かべ涙を流すと、銀の鳥のもとに青い鳥がやってきた。
2羽は体を擦り寄せ暫く男を見ると、躊躇うことなく仲良く飛び立った。
□おわりんご□
最初のコメントを投稿しよう!