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「できたぁ!」
締め切った部屋の中、額の光る汗を拭い、自称世界一の科学者である龍助は『ジャジャーン♪』と得意気に両手を広げ振り返った。
龍助の向こう側には、きっちりと体にフィットしたパンツスーツに身を包み、踵の高い靴を履いた綺麗な女性型の……何か?
なんとなく、高級そうな料理に合わせて置かれている、お高い赤ワインを注がれたグラスみたい。
「えと……もしかして美人秘書とウハウハ♪オフィスラブプレイシチュ用ダッチなんとか?」
「ちょっ!それに全然違うっ!」
かけていた眼鏡を頭の上に乗せ、『どこがそう見えるんだ?』と再度美女をまじまじと近くで見る。
「実用化はまだまだ先だけど、二人用宇宙旅行カプセル5分の1サイズ。この時計はSFアニメでお馴染みの大抵のことはできる優れ物!」
『見てみろ!』と美女の腕に付けた、目覚まし時計に便利そうな大きな腕時計を見せる。
「でかっ!それに重そう……」
「いやいや、褒めるなって。これから小型化するからさっ。んで、驚くのはこっち♪」
呆れている俺に龍助は彼女のスーツの袖を引っ張る。
「大気圏突入にすら耐えられるこのスーツは、宇宙服に採用してもらおうと思ってる自信作なんだ。ってことで、虎雄にプレゼンを頼みたい」
「は……はいぃぃ、俺ぇ?なんか限りなく軽すぎて、さらに意味がわからない」
龍助は中学からの親友だが、予測不可能な性格が影響してか、スマートて顔はいいのに女子ウケがよくない。
だが本人は『女より好きなことしていたい』って我が道だから、女子には熊のぬいぐるみ扱いで恋愛対象にされない俺は悔しかったもんだ。
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