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「ん?何がわからない?」
「急に言われたって、わからないことだらけだよ。それに、そのスーツが宇宙服とか信じられない。宇宙旅行用カプセルったって、どこに乗るのかすら見当も……」
「本物の頭部にはまだ誰も見たことがないコンピューターを搭載予定だ。乗り込むのは穴の都合上、手っ取り早く尻からでいいだろ」
「し……尻…」
うっかり想像してしまい、思わずズッコケそうになった。
「高性能で敵と判断すれば、自動で目からビームが出て、目の前のUFOもボンだ」
「物騒だな……下手すりゃ宇宙問題に発展するだろ…もっと穏やかに運ばないと……」
「帰りの大気圏突入は足からだから、このヒールがあってこそスムーズに突入できるんだ」
俺の話も聞かず、興奮気味に足下を指差し、『すごいだろ?』と胸を張る。
「ああ、すごいとは思う。でも、宇宙旅行なんて、庶民の俺には夢のまた夢だ」
「心配しなくても、『俺が連れて行ってやる』と言ったの忘れたのか?そう約束しただろ?」
苦笑する龍助は首を傾げる俺の手を握る。
「中学の林間学校の時、夜中に部屋を抜け出して外へ出たらすげえ星空で……虎雄が言っただろ?『あの宇宙へ行ってみたいなあ』って」
「俺が?」
「ああ。『俺が宇宙船作って連れて行ってやるよ。一緒に行こう』って言ったら、嬉しそうにまた空を見上げてた。目に星空を映して……『ありがとう……』ってな」
十年以上前の話だ。
そんな子どもの頃の中二病まっただ中の夢見てた話を、実行に移してくれていたのか……
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