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「感動してしまっただろが……」
「そうか?」
「けど……俺は龍助の人生を狂わせてしまったんだな…」
「狂ってなどいない。俺の人生は、虎雄と出会った時から虎雄一色だ。好きな相手には喜んで尽くしたいし、夢は叶えてやりたいだけだ。ただ……残りの人生も、今まで通り一緒にいてくれればそれでいい」
ポカンと口を開け、俺はリアクションに困り固まっていた。
「難しく考えなくていい。虎雄は俺のことだけ考えてろ」
「は?」
「俺以上の男は、宇宙広しと言えどいないからな」
昔と変わらない調子で、龍助は高らかに笑った。
十年後―――
「今でも信じられない……実用化したなんて」
「軽量スーツか?まるでオフィスで仕事するように動きやすさを追求した」
「それもだけど……最初と随分変わった褌ガチムチマッチョ型宇宙旅行用カプセルになったことや、ごつい足にいやにフィットしているピンヒールとか。あと、本当に尻から入ったことに胸がいっぱいで……」
「普段俺が入ってるから、感覚はよくわかってるだろ?」
「わあぁぁぁ!?ちょ……プライベートなことを今ここで言うな!通信を切れっ!」
慌てる俺を見てさらに喜んでいる。
「俺は無重力空間で存分に楽しみたい♪」
「……通信全てを切ったらな」
「いいだろう。さあ、カウントだ……行くぞ宇宙に」
伸ばした俺の手を龍助は握る。
“……3…2…1…”
□おわりんご□
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