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小さな灯りでは遠くてよく見えなくて、私の視界は暗闇に飲み込まれていたのに。二人の距離が近くなって、暗くてもしっかりと彼の顔が目に映っていた。
今彼がどんな表情をしているかもよく見える。
屈み込むように近付く彼としっかり目が合う。
心の拠りどころをお互いの不安な瞳に見出した私たち。
外の激しさが嘘みたいにゆっくりと時間が流れている。
彼に引き寄せられているのか、私が吸い寄せられているのか、もう分からない。
その距離は僅か数センチ、数ミリ、そして。
彼の影に覆われて再び暗闇に包まれても、もう怖くなかった。
【終】
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