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「停電?」
スマホのライトを起動させながら、カーテンを開けて外を見ると、隣のマンションからも灯りが消えていた。そのままスマホのライトを頼りにクローゼットからランタン型の小さな懐中電灯を取り出し、テーブルの上に置く。
そして元の場所に座ると、ふぅっと安堵の息を吐いた。
暗闇に包まれていたのは、ものの数秒。
うん、大丈夫。
「早く雨やめばいいね。あ、身体冷えてない? このタオルケット使って」
「愛ちゃん女の子なのにいろいろ頼もしすぎるから」
「いや、さすがに停電はひとりだったらちょっと焦ってた。でももっと怯えてる穂積くんがいるから逆に冷静になれたというか……。大丈夫、すぐ電気もつくよ」
もごもごとタオルケットを頭からかぶる穂積くんを見ていると、年の離れた弟を見ているような気分になり、しっかりしなきゃと思ってしまう。
思えば昔に弟とこんな雷の夜を過ごしたことがあった。あの時も停電で「大丈夫」って弟に言いながら自分にも言い聞かせていた。本当は私も暗いのが怖かったのに。
今も、あの時と同じ。「大丈夫」って、本当に誰に言ってるんだろう。
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