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「…わかったわかった。
んじゃ今回は私が直接引き取って
世話しましょ。
まぁ、そう里親も見つからないしね」
苦笑混じりで答えてやれば、
斎藤は明らかにホッとした表情に変わり、
ありがとうございますと頭を下げた。
…魔が、差したんだと思う。
教職員として、
してはならないことをしてしまったと
今でも反省している。
あの時。
頭を上げた斎藤の、
泣き笑いのような
頼りなく見える笑顔に。
私に潜む、なけなしの理性が、
胸の奥に潜むなにものかに
捕らえられてしまったみたいで、
自らの煩悩に振り回されてしまった。
私は腰かける回転イスをきしませて立ち上がると、緑の丸イスに座る彼へと身を屈め、そっと右手を添えて頬にキスを落とす。
瞬間の沈黙。
残るのは、急に立ち上がった時のイスの音
彼の懐に隠されている猫の鳴き声
そして、
やや仰け反りぎみに立って呆然とする
斎藤の姿だった。
(…あ。やってしまった…)
後悔に一瞬血の気が引いたが、
やってしまったものは仕方がない。
可愛い斎藤が悪い、などと
バカなことを考えつつ
未だ固まる斎藤に、今のうちにと
簡単に傷ついた箇所を手当てした。
手当てを終えるころ、覚醒した斎藤は
今度は顔を赤く染めていく。
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