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「…斎藤、えっと。悪かった。
まぁ、猫の世話代とでも思って流してくれ」
うつむき、プルプルと体を震わせて
拳を握った斎藤に、私への怒りを感じ
すまないと心で謝る。
「………て……から」
(…ん?なんて言った?)
斎藤は俯いたまま、なにか言葉を発していたが、うまく聞こえない。
そして、息を吸い込む音とともに
彼は顔を上げると、赤をややピンクに染め直した顔で、私をにらみつけて口を開く。
「こ、こやなぎ!」
「……」
「…将来、返してもらうから!」
これは貸しにしておく、と
懐の猫を取り出し、首の後ろをつかんで
私に突きつけてくる彼の迫力に押されて
私は、瞬間の沈黙のあと、あぁと頷き
差しだした両の手の上に猫を受け取る。
名字を呼び捨てにされたことは
迫力負けと後ろめたさで、目を瞑った。
「…手当て、ありがとうございました。
猫も…。あと、僕、もう卒業までココ来ませんから」
身を翻して出て行く、出入り口の前。
立ち止まってそう言うと
乱暴に開けられるかと思ったスライド扉を
拍子抜けするほど普通に開けて
さようならと、出て行った。
(…にゃあ…)
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