一通の手紙

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この部屋を調べることになったのは、 彼女の友人だという人物から、 失踪した友人を探して欲しいという依頼を受けたから。 それだけでしかない。 チェックインしたてのホテルのような、 無個性でとても清潔な部屋。 いやホテルとは違い、 家具がないのだから、 まだ誰も住んでいない部屋と言うのが正しいのだろうか。 そう、 無個性。 何色にでも染まる、 無地のキャンバス。 全てを受け入れてくれる、 空っぽの箱。 彼女と言うのは、 どのような人物であったのか。 友人の話も要領得ず、 やはり部屋から推察しようにも、 何の手がかりもない。 もちろん、 彼女がなぜ失踪したのかも、 わかりようがない。 八方塞がり。 見えなくなってしまった。 それが、 なにを意味するものなのか、 知り用がない。
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