苺tea

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苺tea

「好きです」 「私も…です」 高校3年間付き合った彼。 卒業と同時に私は専門学校へ彼は大学に進路を決め、会う回数は減ったがお互いに大切な存在だった。 この人とこれからもずっと居たいと感じ、彼も同じように思ってくれて。 優しくて紅茶好きで背が高くて…たまに天然な所も含め大好きで、専門学校の卒業記念に旅行に誘われた。 彼との初グアムで毎日ソワソワし、楽しみで仕方なかった。 当日も早めに待ち合わせ場所に着き、何をしようか思い浮かべながら待っていた。 時間近くになっても来ないので、連絡を入れた時に初めて彼が亡くなった事を知ることになる。 駆けつけた時、既に息を引き取っていて、信じられないのとショックで、その場を動く事が出きず呆然と立ち尽くしていた。 それからの通夜や葬式の事はよく覚えていない。 遺品として、彼が渡そうとしてた桜色のピアスをお姉さんから貰ったが、それからの私は毎日泣いてばかり。 部屋からも出ないで、彼の元へ行くしか考えつかなかった。 暗い闇の中、彼との思い出が途切れながら浮かんでも、その後には悔しさと哀しさ……やり場のない気持ちで押し潰されそうになる。 自分を責めたり彼は生きてると錯覚したり、最後には色んな気持ちが空っぽになった気がしていた。 やせ細った姿を見かねた両親は、一人暮らしの私に引っ越しを勧め隣町に住む事になった。 初めは実家に戻るよう言われたが、一人になりたくて無理矢理そうしてもらったのだ。 少し離れただけで景色や街並みが変わり、どこを見ても彼との記憶には繋がらない。 元々の荷物も殆ど処分したので、引っ越し後の片付けも早めに終わった。 無心で掃除や洗濯をして、数日経った頃ふと外を散歩したい気分になり、周辺に何があるのか把握する事にした。 支度をするといつぶりか分からないが、ゆっくり外を歩き始めた。 バス停は意外と近くにあるし、電車の駅も徒歩圏内なので立地はいいかもしれない。 母が選んでくれ私は殆ど上の空だったが、きちんと探してくれたんだと改めて感謝した。 少し歩くとパン屋さんとドラッグストアがあったが、私の足取りは軽くてまだ歩けそう。 その先の角には白い建物の喫茶店が見え、清潔感もあるが趣もあり、何だか可愛いらしい。
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