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「お嬢様……」
何を言えばいいのか。私はわからないまま、止血した彼女の手を強く握りしめた。
あゝ、こんなにも冷たい。
恐らく私の顔も相当青ざめていることだろう。
月子様は、そんな私を見て、笑みを浮かべられた。
「ごめんなさいね……貴方は悪くない。
私が、結婚を厭うて死ぬだけ。
貴方には、暇を差し上げますわ……」
そう言って、月子様は私の腕に頭を傾け、その瞬間、彼女から一切の力が抜けていった。
「っ月子様! 月子!」
必死に、叫ぶ。
頬を伝うものに気付いたが、心から溢れるものを止める術を私は持たない。
私が月子様を愛しいと思ったように、月子様も私を。
私が月子様を憎んでも、変わらず。
王子様を待つと言ったあの頃から、彼女は、変わらず。
ただ私だけが、変わり続け、彼女を殺した。
否、変わらないのに。
変わらず愛しているのに。
嫉妬のあまり厭わしいと感じている自分に気付いていなかった。
白い顔で微笑む彼女。
昔と変わらないその笑みは、どこまでも無邪気で幼かった。
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