月子

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それから何事もなく、月子様の結婚式の日がやって来た。 あの日以来、月子様の男遊びは鳴りを潜め、部屋にこもりきりになっているという。 結婚相手にも一度も会っていないらしい。 らしい、というのは、私はあの後直ぐに月子様付きを外されたからだ。 これもまた、月子様の我が儘。私が彼女の自尊心を傷つけたせいなのだろう。 だが私はむしろ晴れやかな気持ちでいた。 もう、娼婦のような彼女の姿を見ずに済むのだから、と。 そんな吉日に最後の務めを果たしていると、廊下の前方から困り顔をした使用人が歩いてくるのが見えた。 「月子様が、部屋から出てきてくださらないのです」 聞けば我が儘娘が最後の立て篭りを決行中らしい。 なんとも無駄なことを、と思いながら、私は最後だし挨拶も兼ねて手を貸してやろう。と月子様の部屋へ向かった。 扉は中から家具で押さえつけてあるのか、押してもビクともしない。 だがそれは想定済み。直ぐに隣の待機部屋から窓を開けて身を乗り出した。 そこから月子様の部屋には、手すり伝いに行ける。 今までも何度かこうした事があったので、私は慣れた動作で月子様の部屋のバルコニーに降り立った。
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