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頬を膨らませる彼女にヒロキは笑顔のまま近づいて彼女の隣に座った。
「まさか、こんな可愛い奥さんいてハネムーンにナニもないなんて、そっちのほうがからかってると思うけど?」
「かわっ!? ──ほら! やっぱりからかってるー!」
さらに顔を赤くするヒナにヒロキは手を伸ばし結われた髪の後れ毛をそっとなでた。
「あぁ、綺麗の方がいいか?」
「……そんなこと、言われたことないもん」
「そうか? 今日なんて沢山『綺麗』って言われたろ?」
「そ、それは花嫁さんへの社交辞令っていうかっ」
「魔法は解けたけど、可愛いよ」
そう言いながら首筋をツーとなぞられるだけでゾクゾクしてしまう。
「……ヒロ君、酔ってる?」
「ちょっとだけ。今日くらいは浮かれてもいいだろ?」
この声は犯罪だ。
「……心にもないこと言ってる」
「酔ってるからいつもより素直かも」
「ウソ……」
「キスしたいな」
この顔でこの声で、断れる女は居ないだろう。
「ヒナは?」
「さっき、みんなの前でしたし……」
それでもこう返せるのは彼女には免疫があるからかもしれない。
「あれじゃ足りない」
「……」
「ヒナ」
「……もう、いちいち聞かないでよぅ」
もう降参、とばかりに赤い顔を上げてヒロキを上目遣いに睨む。
だから突き出た唇にキスをした。
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