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「えーっと、今先生が診てくれててーー」
そう話し始めると開かれるドア。
「あー、君! それで身内の人は……、いらっしゃいましたね」
出てきたのはそれなりに年を重ねた女医で、その彼女がにこりと優しい笑みを浮かべる。
「はい、それでヒナは?」
かなりレアだろう、焦り顔のヒロキに女医は「大丈夫ですよ」と座るよう促した。
「今から分娩室に移動します。が、もしかしたらカイザーになるかもしれません」
これでも一時は医師を目指した男だ、その言葉の意味が理解できるからそのきれいな顔を歪ませた。
「下に降りてきていないのです。お腹の赤ちゃんは十分成長していますし、母体を考えればーー」
「お願いします」
即答だった。その返事に女医は看護師を呼び、同意書の説明を始める。
「う、そだろ……?」
そして、どうしたらいいか分からない陸だけがおろおろしていた。
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