始まりの終わり

29/44
前へ
/824ページ
次へ
「えーっと、今先生が診てくれててーー」  そう話し始めると開かれるドア。 「あー、君! それで身内の人は……、いらっしゃいましたね」  出てきたのはそれなりに年を重ねた女医で、その彼女がにこりと優しい笑みを浮かべる。 「はい、それでヒナは?」  かなりレアだろう、焦り顔のヒロキに女医は「大丈夫ですよ」と座るよう促した。 「今から分娩室に移動します。が、もしかしたらカイザーになるかもしれません」  これでも一時は医師を目指した男だ、その言葉の意味が理解できるからそのきれいな顔を歪ませた。 「下に降りてきていないのです。お腹の赤ちゃんは十分成長していますし、母体を考えればーー」 「お願いします」  即答だった。その返事に女医は看護師を呼び、同意書の説明を始める。 「う、そだろ……?」  そして、どうしたらいいか分からない陸だけがおろおろしていた。
/824ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9287人が本棚に入れています
本棚に追加