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「自然分娩とカイザーと、両方の準備を進めます。勿論、母体優先で」
「お願いします」
医師ではない自分に、出来ることなど何もない。
こんな時の一分一秒がなんと長いことか。
「篠原さん、連絡しなくていいんですか?」
「あ?」と不機嫌に顔をあげれば、彼女の魔法使いがいつもの笑みではなく、、切羽詰まった顔で彼に聞く。
「あの、だから……、そうか、ヒナにはいなくても、その、篠原さんの家の人に、とか」
彼はヒロキの家の事情は知らない。いや、仮に知っていても彼ならそう言うだろう。
「……こういう時ってするもん?」
「え? やっ、俺も知らないですけど……、どうなんでしょう?」
未経験者が額を突き合わせても、答えなんて出るものではない。
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