始まりの終わり

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『ーーふぎゃぁ……』  その鳴き声に、一斉におしゃべりが止み、みんなが顔を上げた。 「……生ま、れた?」  張り詰めた空気の中で、唯の言葉が待合室に響く。そして、自動ドアが開いた。 「篠原さん、元気な男の子ですよ!」  看護師の声に、糸が切れるがごとくみんなの顔がゆるんだ。 「男の子! 男だってさ!」  バンバンとトモがヒロキの背中を叩く。 「そうか、男の子かぁ……」  感慨深そうに、ヒロキの父親が呟くと隣で三上が嬉しそうに目を細めた。 「おめでとう、ヒロキ」  三上の声に続いて、陸も「おめでとうございます」と軽く頭を下げ、赤石に至ってはなぜか涙目で「おめでとう! 良かった、本当によかったわ!」となよなよと椅子に座り込む。 「ヒナ、お母さんになったのね」  その隣には、同じく涙目の唯がいてトモがその頭を撫でながら、「おめでとう、ヒロキ」と口にした。
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