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「先輩、好きです。付き合ってください。」
丁度掃除の時間、ゴミ捨てのためにゴミ箱を持って中庭を歩いていたところにそんな声が聞こえた。
後ろを振り向くと一人の男の子が立っていた。
私に向かって。
私はゴミ箱を持ちながらキョロリと辺りを見渡す。
が、丁度中庭には私以外の姿が見えない。
はて、聞き違いだったのだろうか。
それにしても、今日のゴミ箱は重い。皆詰め込みすぎでしょ。
そう思いながら再び歩き出した。
「え、あ、あの。ちょ、ちょっと待って、え、先輩?…野山先輩!!」
「え?私だったの?」
くるりと振り返ると意外にもその男の子が近くにいたのだが、すぐに膝から崩れ落ちていくのが見えた。
え、と思い下へ目を向けると、膝辺りを抱えて悶絶する男の子と、プラスチック製の重たいゴミ箱を持っている自分の手が視界に入ってきた。
「あ、あーーーーー。ごめんね。持ってるの忘れてた。これ、思いっきり当たった感じだよね。痛そう。」
「だ、だいじょ…。い、いや、痛いかも…」
「だよねー、これ結構重たいんだー。ごめんねー。」
「い、いえ…先輩なら…、でも、や、やばい、立ち上がれない…。」
「んー、とりあえず、私これ持ってるし、ゴミ捨て行ってくる。じゃあね。」
よいしょ、と重たいゴミ箱を抱え直し、再びゴミ捨てへと歩き出す。
「え、え!?ちょ、先輩!?俺立ち上がれない!!せんぱい!!」
「んん?」
振り返った先には、未だに痛いのか這いつくばっている男の子。
「あの、さっきの続き!!言わせてください!!ここに帰って来てもらえませんか!!俺、ずっと待ってるから!!ここで待ってるっすから!!!」
這いつくばったまま必死そうな男の子に、にこっと笑うと私は今度こそゴミ捨てへと向かった。
「…男の子、さっきなんて言ってたんだろ?一応笑っといたけど…。全然聞こえなかったなぁ。」
そう思いながらゴミ捨てのミッションをコンプリートした私は、教室へと帰っていった。
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