透明人間

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 僕はその他大勢の一人にすぎない。  話すことが苦手な僕は、友達なんて一人もいない。    教室では毎日独りで本を読んでいる。別に読書が趣味というわけではない。ただ独りでできることといえば、それぐらいだっただけだ。  家でもそうだ。  学校では変わり映えしない毎日を送っているのだから、新しい話題もない。自ずと家族へ話しかける機会も減った。  ある朝、何故か体が透けていた。  家族も、クラスメイトも、先生も、皆驚いていた。  そして、僕に、僕のことを色々と訪ねてきた。  僕も自分のことを色々と話した。  今僕は、温かい家族と、たくさんの友人と、親身な先生に囲まれて過ごしている。  今でも僕の身体は透けている。でも僕はここに存在している。それを皆がわかっている。  昔の僕は透明人間だった。
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