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赤色のローブを羽織り高価な宝石の付いた杖を背負っているにも拘らず、剣術士御用達の動きやすそうなレザーアーマーとスカートを身に纏う彼女は正真正銘の魔術師であるのだが、そこいらの剣術士よりもずば抜けて身体能力も高い。
しかし武器は扱う事が出来ないため、全てその能力は攻撃回避能力と
して活かされている。
"放っておいても死なない実力派の魔術師"
そのためかあちらこちらのチームから声が掛かっており今回もどうやらどこかのチームに混じってここまでやってきたようだ。
そんな彼女はことあるごとに僕を見つけると毎回絡んでくるのだからこちらとしてはたまったものではない。
「なんだよ、お前と違ってこっちは初めて来たんだから迷うことくらいあるだろ」
葉っぱを手に取る事は諦めて悪態を付きながらイブキに言った。
「アンタ、やっぱりまだソロってんたんだ」
ふーん、といった具合で彼女は石に腰掛けて座り込んでいる僕を見下ろす。
前々からどこのチームにも入らない僕のことを馬鹿にしてくる彼女であるが、まず僕を受け入れてくれるチームなんて存在しないだろうことくらい僕が一番理解している。
何せ"魔力がないのに魔術師"と名乗り、加えて体力も無い上剣術も弓術も使えないときた。
ポーションを飲めば下位魔法を使えるといえど高価な薬をガバガバと飲まれてしまっては成果次第では赤字になってしまう。
誰が赤字覚悟で受け入れるのだという話だ。
今回、この森を抜けてくるのにだって何本ポーションを消費したかもわからないし通常より時間が掛かったことも認める。
お陰でダンジョンに籠もる前から赤字になっていることも事実である。
それでも僕は頭を下げてまでどこかに属したいとは思わない、むしろ願い下げた。
「いいだろ別に」
食べかけの肉を再び口にしながらイブキに言った。
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