欠陥魔術師

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 この世界には幾多もの数がある生産職とは異なり戦闘職には大きく分けて3つの職業しかなく、まずは僕が属する魔術師についての説明をしようと思う。  んー、そうだな。まず魔術師の大きな特徴を上げるとしたら男女比が明らかに偏(かたよ)っていることじゃないかな。  僕としてはあまり信憑性が無い話だと思うけど、魔法の神と呼ばれる女神(キルケー)の恩恵により女性が優遇されている職業なのだとか。  ギルドに登録する魔術師は女性が占める割合が80%を越えているという統計が出ているのだから何かしら因果はあるんだろうけど、確証の無い言伝えを信じるっていうのはどうも胡散臭く感じてしまうんだよね。  他の2つには剣術士と弓術士があるけど、これにはわざわざ説明する必要はだろう?  剣術はより力強く速く、外界生物(ガルム)を圧倒出来る者が当然上位に位置し、弓術はより正確に一撃を入れられる者が名を上げる。  当然男女比はほぼ均等、いや若干数ではあるが剣術士の方が男性が多く弓術士に女性が多いといった純粋な性別からくる体格差によって選別されている。  この2つは非常に判りやすい職業だと思う。  それで話は戻るけど、じゃあ魔術師は何を競い名声を上げるのか。  答えは簡単で魔力が多く瞬間火力が高くあらゆる知識を持つことである。  主に頭脳を働かせることが得意な勉学方面に青春を注いだような奴らが大抵、魔術師になるんだけど残念な事にこぞって体力が無い。だから使える魔術の種類を増やし様々な特色を持つ外界生物(ガルム)に適切な術を行使し、極力交戦時間を短縮することが必至となる。  しかし中には例外がいて魔術師なのに剣術を、いや剣術士なのに魔術を……どっちでもいいか。  考えて見て欲しい。知識が必要だから部屋に引きこもって勉強していた奴が体力をつけるトレーニングをするのか。  力が、速さが自慢だという屈強な人が肉体・技術を磨かず知識を求めるだろうか。  そんな世界の常識を覆すかのような複数の戦闘手段を持つ特殊な人がこの世界では極少数ではあるが確かに存在するのだ。  その一人が僕の街で一番の名声を、魔戦乙女(ワルキューレ)という恥ずかしい二つ名をありがたいことに頂いている僕と歳がそう変わらない18ほどの騎士団長の娘がいる。  彼女の本名はシルヴィア・シュバレイン。僕とは違い姓を持つ列記とした貴族である。
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