欠陥魔術師

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 しかしある人は言った。 「それじゃあ魔力を持っている人よりも優遇されているじゃあないか」と。  確かに、魔力欠乏症を恐れる心配も無く使いたい時に使いたいだけ、弾薬さえ補充してくれれば砲台の如く、まさに打ち放題なのだから普通なら引っ張りダコ待ったなしになるところだ。  しかし実際は咎められるだけで、誰も僕の事を必要としない有様だ。  それは何故なのか。  答えは至極簡単、純魔力がゼロで高位精霊(ハイエレメント)を駆使することが出来ないため高火力を主力(メイン)とする自然魔法が使えないからだ。  人工的なポーションから作られた人工的な魔力には下位精霊(ローエレメント)だけしか力を貸してくれない。  じゃあ一体何の魔法を使えるんだと皆は口を揃えて問う。  その問いに対して僕は戒めも込めて"欠陥魔法"だと答えた。  僕が何年も費やし魔力を練り続けて構築し、純魔力を持つ人には扱えない僕だけの魔法が完成したのだから、他人に使われる事はないだろうけど万が一にも真似をされては嫌なのであえて使いたくなくなるような名をつけたのだ。  教科書に載っていたり既に出回っている下位魔法から中・上位魔法まで、まず行使するにはそれぞれの位にあった精霊(エレメント)に力を借りないといけない。  まずこの時点で僕に下位以外の魔法が扱えないのは断定的である。  じゃあどうやれば中・上級に近しい火力を出すことができるのか。  それはこれから起こる僕の人生が一変した原因となる出来事で嫌というほど使うことになるから後ほど、ね。  ことの発端は乞食でもしようと下心満載で討伐という体裁で1つのあるダンジョンを選択したことが始まりだった。 「んー、今日はアルテラ神殿でも適当に回って魔戦乙女(ワルキューレ)様のお零(こぼ)れでも拾ってこようかな」 「またエトナさんはそうやって……、ええ判りました。ひとまずアルテラ神殿に出没する外界生物(ガルム)の"入り口付近"の見回りに行くと報告しておきます」 「いつもありがとうございます。じゃあ、いってきまーす」 「くれぐれもお気をつけてくださいね。いくら魔戦乙女(ワルキューレ)様が撃破したといってもダンジョン自体は活性化していますから」  忠告を受けながら背負っている大きなリュックを両手でヨイショと位置直しをしてから踵を返し、ギルドの出口へと向かった。
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