とりあえず、飲みましょう

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   駅のホーム。 仕事終わりに、会社の一部の奴らと飲む居酒屋へ向かう為に、電車待ちの俺の耳に届いたのは、静かに告げられた一人の声だ。 「ずっと……待ってるから」 すぐ近くから聞こえた、感情を押し殺すようなその声が、あまりにも印象的だったから……目線だけ隣に向けた。 先頭車両が来る位置で待っていた為、周りにあまり人はおらず、俺の近くには一組のカップルしか居ない。 そこには、別れを惜しむかのような二人の姿が見える。 この状況ならば、さっき俺が拾った声の主は、本来なら女性の方だと思うのに……意外にも、言ったのは男の方だったらしい。 聞こえた声が低かったから、男だとは予想はしてたのだが、あの状況を盗み見た今は、若干驚いている。 泣くのを必死で耐えてる――でも、耐えきれず、涙が溢れてる男に比べて、女性は対象的で、複雑な表情を浮かべてはいるものの、涙は流していなかった。 女って、強いな……。 他人事なので、客観的に見ながら、そう思った。 遠距離恋愛にでもなるんだろうか? 二人の様子を見ながら少し想像した所で、待ってた電車がやって来た。 その電車に俺は乗ったが、カップルは乗らなかったので、二人とはそこでお別れとなった。
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