1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ヤバいよ、栞奈!!キャー、ヤバーい!!」
あなたのボキャブラリーも、十分ヤバいけどね・・・
なんていう私の想いなど、梓には届くはずがない。
聞き取るのも難しいくらいの黄色い声を上げているんだから。
「なにが?」
「栞奈ってば、知らないの!?人生の半分、いや、半分以上損してるよ!!」
私が呑気なことを言おうものなら、"人生を半分以上損している"という驚きの回答が返ってきた。
―――――答えになってないし・・・
心の片隅で届くことのない文句をつぶやきつつ、この場合は何も言わない方が無難だと思った。
「だって、あの美咲 陸(みさき りく)がよ!?同じクラスなんだよ!?コーフンするでしょ!?」
そんなことを言われても、その美咲陸を知らない私にとっては、ただただ疑問符が浮かび上がってくるだけだった。
一方で、女子たちの歓声は増していくばかり。
男子は、少しというよりとても迷惑そうな顔を向けている。
女子はその目線に気付かないのか・・・?
女子の力、恐るべし・・・
「なおやー」
「んー?」
「美咲陸って誰?」
周りの子ばかりか、梓にまで置いて行かれた私は、近くにいる直哉の席へ行き、顎を机に乗せてそう尋ねた。
「なんだ、神崎知らないの?」
「うん」
「女子曰く、イケメンらしいよ。俺には、よー分からんけど」
はーあ、なんて小さなため息を漏らしながら、しょんぼりと肩を落としている直哉。
「直哉はカッコいいと思うけどなー」
教室前方を見ながら、私はぼそっと言った。
もちろん、他意はなく。
「神崎?」
「ん?」
「男には、あんまりそんなこと言わない方が良い」
「なんで?」
褒めるのは良いことなのに、なんて思った私。
「男ってバカだからさ、神崎に他意はなかったとしても、勘違いしちゃうから」
「へー。でも、大丈夫だよ」
「私のことを好きになる人なんていないでしょ」
最初のコメントを投稿しよう!