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いかにも当たり前であるかのように言った私に、直哉はぽかんとしていた。
二人の間に駆け抜ける沈黙の波。
―――――あれ、なんかマズいこと言っちゃった・・・?
自分の発言を振り返ってみても、当然見つかるわけもなく。
私はじっと直哉の方を見つめていた。
「それ、マジで言ってんの?」
「え、本気も何も自分で思ってることだし・・・」
直哉は、ガックリと肩を落としてしまった。
だって・・・
恋とかそういうの、よく分からないし。
高校二年生になったのに初恋も未経験の私に、甘酸っぱいとか苦いとかの恋愛の味が分かるわけがない。
漫画とか映画は見るけど、それはあくまでその世界のことっていうか・・・
「だからアイツのこと知らないわけね」
「そうそう」
コクコクと頷く私に、大きな影が重なった。
「・・・ん? あ・・・・・・」
見上げた先にいたのは、さっきまで女子に騒がれていた人。
それに、考えなくても美咲陸本人だとわかる。
周りは静まり返り、すごく刺々しい視線を次から次へと感じるから。
「栞奈ちゃんて、恋したことないの?」
「・・・」
「俺が栞奈ちゃんの初恋、奪っちゃおっかなー」
「!」
全身に、雷が落ちたような衝撃が走った。
この人、ただのチャラ男じゃない!!と。
みんなは、こんな人がカッコいいの?
確かに、身長は高いし、俳優にいてもおかしくないくらいのイケメンだとは思う、けど・・・
「彼氏がいるので、どうぞお構いなく」
「え、そうなの?」
ここで引き下がってくれるのは、彼なりの優しさなのか・・・?
それとも、ただのバ・・・カ・・・・・・?
私は、あっちへ行ってという主旨の笑顔を彼に向けた。
「せっかく可愛いのに」
それでも、全く以ってひるむ様子を見せず、少々反発的なことを言われた上に、頭まで撫でられてしまった。
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