#1.大人と子ども

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「ありがとう!!」 さっきまで物静かにしていた梓だったけど、今は、何というか・・・ 言葉では表せないけど、とにかく嬉しそう。 梓は照れくささを隠すかのように微笑み、直哉もそれを見ていた。 そんな梓は、小さい頃からのれっきとしたカメラガール。 写真を撮るのも、写真に写るのも大好きだった。 本人曰く、お父さんから影響を受けたらしい。 高校入学と同時に写真部に入り、コンクールに作品を応募したり、校内の展示スペースに写真を飾っている。 その度に入賞し、今では部を引っ張るエースだと聞いた。 「どんなところがいいの?」 「迷いがない感じ」 どんなところがいいのかという抽象的な私の質問に、直哉はそう即答した。 「ん?」 「俺の父親が写真撮るのが好きで、よく言ってるんだよね。写真には、撮影者のその時の気持ちとかが素直に現れるって」 梓が、直哉の方を真っすぐな瞳で見つめていた。 色素の薄い髪の色が、午後の日の光に照らされて、栗毛色になっていた。 隣に座っている梓の今の気持ちが、間10センチを越えて胸にそっと届いたような気がした。 春の陽だまりの様に優しく、眩しいものに少しだけ戸惑った。 写真をほめてもらって嬉しいというレベルではなくて、コップの中の水に浮かんでいる氷を溶かしてしまいそうなくらい、熱かった。 「あっ!私、学校に忘れ物しちゃった!戻って取ってくる!」 「え、今から?食べてからにしようよ」 帰り支度を整えている私に、梓が不思議そうに目を向ける。 「・・・あ、俺も」 「翔希も?仲が良いねー」 仲が良いのは、誰がどう見てもあなたたちの方だけど。 梓は少し疑っているようだけど、一方の直哉はそんな様子は欠片もない。 それよりなにより、メニューを注文する前で良かった。 2人をお店に残して、中野くんと私は外へ出た。 「はぁ~」 内心は、これまでに経験したことがないくらいドキドキしていた。
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