#1.大人と子ども

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食事はお互い終わっていて、今ではすっかり対話モードに突入している。 「神崎さんは?なんかやってた?」 「中学までバスケ部だったよ」 決して強いわけではなかったけど、それでも一応主将だった。 地獄のような夏休みの練習は、声を掛け合ってみんなで乗り越えてきた。 その時は目の前のことに必死で分からなかったけど、今となっては、あの頃は本当に楽しかったと思う。 「今はバスケ部入ってないの?」 「入ってないよ」 だから、急に羨ましくなる時がある。 体育館やグラウンドから聞こえるブザーや笛の音、バッシュの音。 その場独特のにおい。 今でも、変わらず大好きだ。 「今度、見に来ない?うちの部」 「え?」 「神崎さんが良かったら、だけど」 「行く!行きたい!」 「都合が良いとき連絡してね」 「わかった」 ・・・ん? 連絡? 私たち、お互いの連絡先知らないよね。 「これ、俺の」 中野くんは、すぐそこにあった紙ナプキンに黒いボールペンで連絡先を書いて私にくれた。 渡されたのは、メールアドレスと電話番号。 丁寧に書かれた英数字を眺めていると、ふわりと一つの疑問が芽を吹いた。 「中野くんは、さ」 「ん?」 「LINEとか、しないの?」 「あー、うん。便利だけどさ、軽い感じがして俺はあんまり好きじゃないから」 「私も、そう思う」 「おー、気が合うねー」 そんな風に話した人の中で、私と意見が合致した人は数えるほど。 意見が違うのは、それはしょうがないけど、「古い」とか「栞奈面白いね」と言って、バカにされるときが何度もあって、ポジティブな私でもへこんだ。 ――――『あんまり好きじゃない』 でも、その言葉が嬉しかった。 「それと、朝大丈夫だった?」 「あーっと、美咲くんだっけ。私には合わないみたい」 「全部顔に出てた」 我ながら恥ずかしい。 「あとさ、翔希で良いよ。苗字長いし」 「あ、うん」
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