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「・・・」
「・・・」
なんだか、変な沈黙。
居心地が悪くなくて、このままでも良いと思えてしまう。
「・・・栞奈」
「え!?」
中野く・・・翔希くんの突然の名前呼びに驚いたのと、自分にも驚いた。
「いや?」
私は、首を横に振って返事をした。
「いやじゃない」
HR前、美咲くんから呼ばれた時は嫌で嫌で仕方なくて、とても居心地が悪かった。
でも、翔希くんの口から出た私の名前の響きは、全然嫌じゃない。
―――――むしろ、そう呼んでほしいと思ってしまった。
「そろそろ帰ろうか」
「そうだね」
お会計を済ませたころには15時になっていて、1時間近くこのお店にいたことになるわけだ。
短く感じたのは、気のせいだ。
きっと、そう。
「明日も頑張ろう!」
「そうだね」
翔希くんは、私のテンションに上手く対応できるようになっていて、つい関してしまった。
こんなに短時間で私に合わせられる人は、梓以外に初めてかもしれない。
「あー、でも、どうしようかなー・・・」
私には、大きな悩みの種が一つ残ったまま。
それも、今朝から抱えている大問題。
「彼氏いるって、言っちゃった・・・・・・」
「あ、あれね・・・」
美咲くんに、いやクラス40人の前で真っ赤な大嘘をついてしまったこと。
「どうしよー・・・」
「俺で良ければ、付き合うよ?」
「・・・」
口がぽかーんと開いてしまい、言葉が出なかった。
だって、"それ"="彼氏のフリをしてもらう"ということだから。
できるわけがないし、中野くんにしてもらうわけにはいかない。
いくら何でも、申し訳ない。
「平気、平気。自分でなんとかするから」
「そ?なんか困ったことあったら言ってよ」
「・・・うん」
心のうちは不安だらけ。
そのおかげで、いつもなら元気に活動しているポジティブもどこかに息を潜めてしまっている。
でも、どうせ私のことだ。
明日の朝になれば、きれいさっぱり忘れているんだろう。
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