#1.大人と子ども

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終わりまでサッカーの練習を見ていた私に、中野くんは笑いながら近づいてきた。 「栞那、なんでいるの?」 「え、だって今日練習見ていくって・・・」 「・・・でも、終わりまでいるとか思わないし・・・」 私もそのつもりだった。 でも、練習を見ているうちに、頑張っている中野くんより先に帰るのは申し訳ない気がした。 それに、今日はバイトも入ってなかったし。 私たちの高校は商業高校なので、定期考査前後を除いては、バイトは比較的奨励されている。 それを伝えると、中野くんは恥ずかしそうに笑った。 「・・・なんかそれ、めちゃくちゃ嬉しい」 「ふふっ」 嬉しいなんて言われたら、こっちまで嬉しくなってくる。 そして何気なく腕時計に目を移すと、19時を回ろうとしていた。 私の頭が通常運転に戻る。 次の電車は、19時12分。 これを逃したら、次は19時47分。 何がなんでも、乗らなきゃいけない。 「・・・走るよ!」 「うん!」 私は、中野くんに手を引かれて走っていた。 春の風が夜の熱気に包まれ、少しだけ蒸し暑かった。 男の子らしい、ごつごつした手に包まれている私の右手だけ、妙に体温が上がっているのを感じていた。
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