1人が本棚に入れています
本棚に追加
<次は〇〇駅、〇〇駅。お降りの方は――――>
ホントに気持ちよさそうに眠るんだな。
起こすのがかわいそうになってきた。
「もう少しで降りるよ」
「・・・」
躊躇いながらゆっくりと肩を揺さぶってみたけど、期待通りの反応。
大人びてるとは言うものの、この子の寝起きの悪さは何とも言えない。
誰しも、眠りの中にいるところを邪魔されたら不機嫌になるもの。
梓はその中でも群を抜いているというか、なんというか・・・
「う~ん・・・」
一回だけ唸った後、梓は自分のスペースを上手に使って伸びをした。
「ふぁあ・・・」
あらあら、あくびまでしちゃって。
これじゃ、猫にそっくりだって言われても仕方ない。
でも、梓は猫にトラウマがあるから、それを言うと私が怒られる。
そう思っていたとき、空気が一気に溢れ出すような独特な音を立てて、電車のドアが開いた。
入れ替わり立ち替わり、サラリーマンや学生が車内に出入りする。
「ほら梓、ボーっとしてないでさっさと歩くよ!」
「分かってるってばー」
さっきまで爆睡してた人が何を言ってるんだか。
まだ寝ぼけている梓の手を引いて、人波を押し分けて進んでいく。
私は背が低いから、少しでも気を抜けば、あっという間に押し戻される。
「うわっ・・・」
追い抜かれるときに誰かと強く肩がぶつかって、その反動で、私は冷たい床に両手をつくことになった。
・・・痛い。
じんじんする膝を気遣いながら、私はゆっくりと立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!