#1.大人と子ども

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<次は〇〇駅、〇〇駅。お降りの方は――――> ホントに気持ちよさそうに眠るんだな。 起こすのがかわいそうになってきた。 「もう少しで降りるよ」 「・・・」 躊躇いながらゆっくりと肩を揺さぶってみたけど、期待通りの反応。 大人びてるとは言うものの、この子の寝起きの悪さは何とも言えない。 誰しも、眠りの中にいるところを邪魔されたら不機嫌になるもの。 梓はその中でも群を抜いているというか、なんというか・・・ 「う~ん・・・」 一回だけ唸った後、梓は自分のスペースを上手に使って伸びをした。 「ふぁあ・・・」 あらあら、あくびまでしちゃって。 これじゃ、猫にそっくりだって言われても仕方ない。 でも、梓は猫にトラウマがあるから、それを言うと私が怒られる。 そう思っていたとき、空気が一気に溢れ出すような独特な音を立てて、電車のドアが開いた。 入れ替わり立ち替わり、サラリーマンや学生が車内に出入りする。 「ほら梓、ボーっとしてないでさっさと歩くよ!」 「分かってるってばー」 さっきまで爆睡してた人が何を言ってるんだか。 まだ寝ぼけている梓の手を引いて、人波を押し分けて進んでいく。 私は背が低いから、少しでも気を抜けば、あっという間に押し戻される。 「うわっ・・・」 追い抜かれるときに誰かと強く肩がぶつかって、その反動で、私は冷たい床に両手をつくことになった。 ・・・痛い。 じんじんする膝を気遣いながら、私はゆっくりと立ち上がった。
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