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「え、なにこれ・・・」
「・・・こんな偶然、ある?」
「すごい!皆一緒だよ!!」
校門を通ってすぐの中庭では、多くの生徒が集まっていて、彼らの視線はみんな同じ方を向いていた。
「また一緒だね」と、同じクラスだという事を友だちと喜んでいる女の子もいれば、片想いのあの子と一緒になりたかった、と悔やむ男子の声まで。
こういうのは、耳を澄まさなくても聞こえてくるもの。
クラス替えに掛ける想いも、十人十色というわけか。
「栞奈?行くよ?」
「うん!」
新しいクラスでは、来ている人の方が少なく、普段なら廊下を歩いている最中から聞こえてくる、喋り声や笑い声などが耳に届かないわけだと納得した。
電気を点けているのになにか暗い、というような、誰もが嫌だと感じる空間だった。
そんな中、私たちはその重苦しい空気を追い出すように、大きな声で喋り始めた。
梓も、直哉も、中野くんも、そういう雰囲気があまり得意ではないようだった。
8時15分も間近になると、教室も徐々に賑やかになり始める。
ということで、必然的にお喋りはお開きに。
・・・しようとしたところ、教室の近くがざわついていることに気付いた梓は、上半身を窓から乗り出し、廊下の方を興味津々な面持ちで見つめている。
そして一分と経たないうちに、満点の星屑を散りばめたような瞳を私に向けると、たちまち肩を叩き出した。
色白で華奢なその腕からは、全く想像できない強さで。
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