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僕の家は貧しかった。狭い土地に野菜の種を蒔いて育った野菜を食べていた。僕が生まれた頃にはもっとたくさんあった食べ物。機械化された体には必要ない。そんな理由で機械化が進むにつれて食料の生産量は減ったという。
機械化人間になればひもじい思いはしないのに……。そうボヤく度に祖父は言った。
「人が人でいるのは大切なことだ。神の御心を信じなさい」
教会に集まる人々が一人、また一人と消えても神を信じ同じ言葉を語っていた――。
祖父の思いを胸に、僕とルナは木々の合間を縫って走っていた。さっきから、何度も何度も繰り返し人間狩りから逃げている。
二つに分類されほんの少し寄り添っていた社会は完全に二つに別れ、勝ち誇ったように僕たちを追いかける。
「そろそろ、奴らも諦めて……」
そう言って、祖父から貰った年代物の懐中時計をポケットから取り出した。
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