回想

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回想

 当時の僕は、週末になると決まって母の実家である杉並に連れて行かれたものだった。父は国内外を飛び回りほとんど家にいなかったし、祖父は皆澤の初孫である僕を猫っ可愛がりしていたから、必然的にそうなったのだと思う。    母のすぐ下の弟に当たる政明は長男で、見合い結婚で節子をもらうと、当時の慣習通り、杉並で祖父母との同居生活を開始した。政明と節子は母屋とつながった離れで暮らしていたが、僕は杉並に行くと必ず、離れに入り浸っては節子に遊んでもらっていたものだった。    節子にしてみても、ふだん政明が仕事に出ているときは母屋で舅・姑の顔色をうかがいながら暮らしているのだから、僕の相手をすることで気がまぎれるということもあったはずだ。とにかく節子は僕に優しかったし、僕は節子に遊んでもらうのが好きだった。  節子は僕よりちょうど20歳年上。身長150センチちょっとの小柄で、雪のように色白だった。「節子おばちゃんは白雪姫みたい」などとふざけては、節子を喜ばせたものだ。     幼い子どもながら、なかなか上手いことを言ったものだ。 今にして思えば、こども心に淡い恋慕の情が芽生えていたのかもしれない。僕にとって、節子は本当に白雪姫なのだった。
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